Radiological Protection of People and the Environment in the Event of a Large Nuclear Accident


Draft document: Radiological Protection of People and the Environment in the Event of a Large Nuclear Accident
Submitted by Saki Okawara, non
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  2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所の爆発以前から、日本の発電量のうち原子力発電分は余っていました。チェルノブイリ原発事故後に、原子力発電の危険性が叫ばれ、世界の潮流として、原子力発電から再生可能エネルギーでの発電の方向に向かっていましたが、日本政府と原子力産業界は、原子力発電を推進してきました。

 また、日本は地震列島とも呼ばれるほど地震が頻発する地域に位置しています。2007年の新潟県中越沖地震によって、東京電力の柏崎刈羽原子力発電所が壊滅状態になった、たった4年後に東日本大震災があったことを考えれば、日本での原子力発電は不可能であることは一目瞭然です。

 元福島県知事も県民も運転に大反対した、プルサーマル発電の3号機は、2010年10月に運転を強行し、その5か月後の2011年3月に1,2号機と共に爆発しました。爆発したのは福島県民が使うためのものではなく、関東地方に送電するための東京電力の原子力発電所でした。

 その結果、福島県民は無用の被曝を強いられ、放射能汚染に故郷を奪われ強制避難しなければならなかった人たち、高線量だったのに政治的な理由で避難指示が出されなかったため、自力で避難をしなければならなかった人たち、避難したくても様々な事情で避難できなかったために低線量被曝を余儀なくされた人たちが未だに犠牲を払い続けています。自力で避難を続けなければならなかった人たちの中には、経済的な困窮状態や精神的身体的な病を抱える人が少なくありませんが、政府も福島県も、避難の権利を認めず、帰還政策を強行にすすめ、避難者に対して避難住宅の無償提供を打ち切り、あろうことか裁判に訴えてまで避難住宅からの追出しを謀るなど、避難者の人権を無視した政策を取り続けています。

 福島県は第一次産業の農業、林業、漁業で成り立っている県でしたが、放射能汚染によりすべてが一時壊滅状態となりました。現在は農産物へのセシウムの移行は少ないことが分かりましたが、土壌汚染は続いているため、農業者は外部被曝と土壌から舞い上がる土埃を呼吸することにより内部被曝を受けることになります。また、山林除染はしないため高濃度に汚染されたままですから、林業の再開は被曝労働となります。山側から原発サイトに流れ込む地下水がメルトダウンした核燃料を洗い放射能汚染水となっています。公的にはそれらを汲み上げて浄化装置で浄化するとしていますが、実際には現在の技術ではすべてを除去することはできず、高濃度放射能汚染水となってタンクに貯まり続けています。政府はその汚染水を希釈して海に放出することを提唱しており、魚類のセシウム濃度が下がってきたところでの、汚染水放出は漁業の死活問題となり、漁業者は怒りと共にこれを拒否しています。

 在留せざるを得ない、また帰還せざるを得ない福島県民の中には、子どもを低線量被曝から守るために一時的な避難である「保養」に参加させる親がいますが、政府も福島県もこれを制度化しようとしないため民間や個人の善意に頼っているのが現状です。私たちはこどもや妊婦が放射線の影響を受けやすいことを知っています。子どもや若い女性、妊婦を守るための法整備と制度化を、勧告に加えてください。

 子どもの原発事故後の小児甲状腺がんも増え続け、福島県県民健康調査検討委員会も多発を認め、発生の男女比が通常の甲状腺がんとは違うことも認めています。なぜ、ICRPの勧告案では「放射線被曝の影響である可能性は低い」と断定できるのでしょうか。

 ここには書ききれないほどの、福島県民(福島県民に限らず、放射能が降り注いだ地域の人々)の苦悩についてICRPはどこまで把握しているのでしょうか。ICRPの勧告案のAnnexBからは、それらを読み取ることはできませんでしたし「被災者の尊厳を尊重する」とはどのようなことなのか、全く具体的ではありません。

 被災者の尊厳を尊重することは、被災者の在留、避難、帰還の選択の自由を保障するための政府の政策や財政支援、原子力事業者の賠償がなされなければなりません。福島ではこれらのことが、十分なされていません。これらのことは是非勧告に加えるべきです。

 また、要点にある「参考レベル」という概念はわかりにくく曖昧で、緊急時、初期、中期で、年100mSvは高すぎるため、絶対採用しないでください。回復期の参考レベルの「一般的に10mSvを超える必要がないであろう」も同様にわかりにくく曖昧です。「代表的な値は年1mSvである」というはっきりとした数値を残してください。曖昧な表現は政府によって都合の良いように使われる恐れがあります。そして、ICRPの大原則である「しきい値なし線形(LNT)モデル」を堅持してください。

 ICRPが真の放射線防護文化を作ろうとするのであれば、2014年のICRPの倫理規約の「放射線の有益な使用を過度に制限することなく」に、「これ以上原子力発電は続けない」ことを明記し、「放射線の有害な影響から個人、集団、環境を保護することを優先する」を守ってください。原子力発電をやめない限り、真の放射線防護文化は作れません。

 これは私たちの世代だけの問題ではありません。これから続く次の世代に安心して住み続けられる環境を渡していけるかどうかの瀬戸際に立っていることを認識して、世界中の政府や原子力産業界に勧告できるものを作ってください。

 


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